2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧
つまんで見れば透けているほどに薄い。思うところなんて何もなく、あるのは惰性だけ。うすっぺらいを積み上げてもやっぱりうすっぺらくて、そのくせ情けなさと申し訳なさは織り交ざり層を幾重にも形作っているのだから、皮肉だ。
すっぱり二元論とはいかなくて、「どうでもいい」すらどうでもいい。
満を持して今日へ来たのではない。ただ昨日に居られなくなっただけ、逃げてきただけだ。
灰色の空。じっとりインナー、じめつくジーパン、からまる純正イヤホン、折り畳み傘の湿ったケース、長い前髪。デバフにデバフが重なって、もう戦えません。もうダメ。
吐いた言葉は戻らないのだから、よくよく選ぶべきなのだ。一見して悪とみなされる側にも三分の理があって、それを慮ることなく、一方的に否定するのはあんまりだ。
力強くて、赤くて、真っ直ぐな矢印の一閃に、くるくる回っていた嫉みは期待へと昇華して、ふっと身体の軽くなる思いがした。
灰色の凪いだ海へ、桃色のビー玉をぽとんと落とした。
ああ苦しい、苦しいと喘ぐ自分を見れば、私の首を絞めているのは他でもない、私の両手だったのだ。
出会いが別れを生むというのなら、逆もまた然り、別れは出会いを生むのだろう。さりとて、別れはやはり、寂しくて切ないから、まだない出会いをもってして、とても慰みにならないのだ。たとえそれが、正しさの面前だったとしても。
ないものはない。つくるしかない。
駆られた無力感を繕うとするほど、無様に解れていく有様で、かえって何もしない方が良いのだろう。しかし、知ってしまった綻びをそのままにできないで、気付くとまた縫い始めている。どうか変わってくれ、と祈りながら。
嫌われたくない、を積み重ねていった結果、気付けばぐらぐらの塔の上に立っていた。
夜更けに、スポーツウェアを着込んで玄関を飛び出す。この頃、日中は暑くなってきたものの、夜はまだ冷えるらしい。家の前に歩み出て、アキレス腱だけ伸ばす。小さい頃に、これだけはちゃんとやれと誰かに言われた気がする。 セーフティライトの赤いLEDを灯…
価値あるものは簡単には手に入らない。簡単に手に入るなら価値なんてない。
広告のない広告板が、自らを広告していた。
自分がかわいくて笑って、自分がかわいそうで泣いて、なんて小さくてくだらないのだろう。
誰にも嫌われたくないというのは、まったく自分の抽象、自己の忘却なのだろう。誰にでも受け入れられる事実を口にしたところで、それは周知のトートロジーを繰り返しているにすぎず、つまり何も言っていないのと同じだ。そこに自我はない。 分かっているのに…
真っ暗の部屋に、人がうずくまっていた。脚を山折りし、両の拳を合わせ、顔を伏せていた。 亡霊かと思った。それでも湛えられた静寂に、白い幽光をみるみると発していた。 確かに見たのだ。それが嬉しかった。
分かりやすい「分かる」だけを拾うだけでは、うすっぺらな関係で留まるだけだと分かっていた。「分からない」ことを認めた先で本当に分かり合えるのか不安でたまらなくて、遠慮と畏怖に口をつぐんでいた。 分かり合うことが友達であるための必要条件でないこ…
いくつ言葉を重ねたとしても、何にもならずに消えていくのだろうと感付いていた。分かっていながら、それでもゼロは選べなかった。 春を待つ胸が苦しいのだ。
ビーカーの口を優しくなぞって、自分の指を確かめていた。
嫌いな言葉は取りのけて、食べられる言葉だけを食べていた。
でまかせの言葉を燃やしたあとの灰で描いたような心象がくすぶっている。
期待しすぎない、求めすぎない、ろくなことにならない。
凹と凸を合わせて四角を作り、接合面で真っ二つに切れば、出っ張りがことんと落ちて、ああもう合わなくなったのだ。
生まれていた「お前誰だよ」が生傷のように痛々しくて、そう言われたくなくて何も言わなかった。何者でもない人間が何かを評価したところで、からっぽなだけ。じゃあいつか何かを語る自分は、それだけ自分を認めてるってことになって、ならそのいつかはずっ…
言いたいことはたくさんあるのに、それが倫理に照らしてどうなのかとか、それらすべては互いに矛盾しないかとか、そういったことを点検するために、喉元の言葉を口に出す前に、アルキメデスよろしく社会性の水槽に沈めてみているから、言いたいけども言えな…
怒らないことと怒れないことは違う。前者は無関心と諦念で、後者は怯えと保留だからだ。
訳も分からないで不安を覚えて、ただ根拠のない「大丈夫」という言葉を渇望していた。
車窓から花冷えの空を眺めていた。その薄青がまるで、グラスに注がれた冷水のように映えて、ならば私はいま水の中にいるのだ。